建築設計で使用される図面の種類とは?図面の役割を徹底解説
建築設計には建物の構造を平面上に表した図面が用いられますが、建築物の全体像を把握するためにはさまざまな設計図を制作する必要があります。
今回のコラムでは、建築設計に使用される図面の種類と役割について解説します。
建築設計で必要とされる図面の役割とは?
建築設計に用いられる図面の役割は、建築方法を明確に示すことです。
設計図は、施工主や設計者が思い描いた建物のイメージを施工者に伝えるためのものです。設計図には、建物を建てるために必要な情報がすべて詰め込まれています。
施工者が設計図の内容を理解することで、設計者がイメージしたとおりの建物を建築できるようになります。
図面の種類
図面の種類は大別すると「意匠図」「構造図」「設備図」の3種類に分けられます。本項では図面の種類について詳しく説明していきます。
意匠図
意匠図とは、建物が完成した時点の間取り、仕様、デザインを図面上に表したものです。
意匠図には、上から見た図面、横から見た図面、建具や階段を詳細に示した図面などの数多くの種類があります。
■案内図・全体配置図
案内図とは、目印となるような著名な場所から建物までの経路を示す図面のことです。全体配置図は、建物の周りにある道路や隣地との位置関係が示されています。
■部分配置図
敷地の地盤の状況や、建物が敷地内のどこに建てられているかが示されている図面です。全体配置図よりも縮尺が大きいため、建物と敷地の詳しい位置関係がわかります。
■平面図
建物の各階を平面的に見た図面のことで、真上から見た図が記載されています。平面図には部屋の配置、柱の位置、間仕切りされる箇所などが示されています。
■平面詳細図
平面図をより詳細にしたもので、建具の寸法や壁の厚さ、躯体の寸法が記されています。出入り口や窓は、人や物が出入りするための有効寸法を確保する必要があるため平面詳細図が用いられます。
■屋根伏図(やねふせず)
屋根の部分を平面的に見た図面で、真上から見た状態が記載されています。屋根や庇の大きさを表すために使われます。
■天井伏図(てんじょうふせず)
部屋の中から天井を見上げた状態で作成した図面のことです。天井の配置のほか、天井に使用する建材の種類も記載されます。
■立面図
建物の外観を表した図面です。東西南北の各方向から見た図面が作成されます。
■展開図
各部屋の中心から四方の壁を内観したときの情景を表した図面です。天井の高さや、窓・ドア・家具の位置などを把握することができます。
■断面図
建物の断面を真横から見た図面です。少なくとも、長辺と短辺の2つの断面図が作成されます。
■矩計図(かなばかりず)
断面図の縮尺を大きくした図面で、断面の状況が詳細に記載されています。建物の地盤の位置、床面の高さ、窓の高さ、梁の位置関係を読み取ることができます。
■階段詳細図
階段の構造を詳細に示した図面です。階段は複数のフロアにまたがるため、各階での納まりを検討するために作成されます。
■求積図
敷地や建物の面積を求めるときに使われる図面です。敷地求積図、建築面積求積図、床面積求積図などがあります。
■建具表
建具の位置、大きさ、種類が記載されている図面です。建具とは窓や扉などの開閉可能な仕切りのことを指します。
■雑詳細図
寸法が小さい家具や構造がわかりにくい床や壁の納まりを部分的に拡大して記載した図面です。細かな寸法や仕上がりが詳しく示されています。
■サイン図
建物に使用される目印(サイン)を示した図面です。よく見かけるサインの例として、トイレの「男性用」「女性用」を示す男女マークがあります。
構造図
構造図とは、建物の構造を示した図面です。柱や梁、壁などの寸法や構造部材を配置する方法が記載されており、建物を建てる際の参考となる図面です。
構造図も、意匠図と同様に複数の図面に分けられます。
■伏図(ふせず)
伏図とは対象物を真上から見た図面のことです。柱、梁、建物の基礎などの構造部材の大きさを知ることができます。
■軸組図
軸組図とは構造部材を真横から見た図面のことで、建物の骨組みの状態が示されます。縦軸で建物の高さを、横軸で建物の幅を読み取れます。
■標準図
設計の基本となる構造部材の納まりや仕上げ方法などが記載されている図面です。詳細を調べたい場合は後述する「詳細図」を利用します。
■詳細図
構造部材の詳細が記載されている図面で、標準図よりも縮尺は大きめです。部材の納まり寸法や仕上げの詳しい方法が載っています。
設備図
設備図とは、建物内で使用する設備に関する図面のことです。主な設備としては給排水、給湯、ガス、電気などがあり、設備図には給排水やガスの配管の位置、電気のコンセントの数などが記載されています。
また、設備図は建築の進行状況に応じて5種類の図面が作成されます。
■基本設計図
最初に作成する設計図は基本設計図です。施工主の要望や建物の設計状況、周囲の環境に対する配慮などを踏まえたうえで、設備の設計図を作成します。
■実施設計図
実施設計図は基本設計図の内容をもとに作成されるものです。実施設計図は基本設計図より詳細に記されており、見積もりの作成で使用されます。
■確認申請図
確認申請を行うときに使用される図面です。確認申請とは、建物を建てる前に都道府県や市に対して建築確認の手続き申請を行うことです。
■施工図
施工を行うときに使用される図面で、実施設計図をもとに作成されます。施工に必要な使用部材や構造計算などの設計情報が詳細に記載されています。
■竣工図
建物の完成した姿が記載された図面です。施工中に設計変更が生じる場合があるため、施工図と竣工図の内容が異なる場合もあります。
図面制作のポイント
実際に図面を制作する際に大切なポイントは、「わかりやすさ」と「目的」です。
本項では上記のポイントについて具体的に説明していきます。
わかりやすさ
わかりやすい図面を制作するために大事なことは、以下の2つです。
・余計な装飾を控えてシンプルにまとめる
・表記ルールを統一する
あちこちに装飾が施されている図面は、どれが重要な情報なのかかえってわかりづらくなるため、必要な情報だけをシンプルにまとめるように心がけましょう。
建築現場では多くの関係者が作業を行うため、わかりづらい図面を制作すると作業が遅れる原因になってしまいます。
引き出し線や寸法の表記ルールを統一することで、図面の内容を理解しやすくなります。
目的
「誰に何を伝えるか」や「施工者に必要な情報を落とし込む」といった、図面の制作目的を明確にすることも大切です。
図面を使う人が求めている情報を、一目でわかるように簡潔に記載することでわかりやすい図面が作成できます。
まとめ
建築設計を行う際に使用する図面にはさまざまな種類があり、記載される情報は多岐にわたります。設計者のイメージどおりの建築物を建てるためには、わかりやすい設計図を作成することが大切です。
施工者が使いやすい図面を作成することで、建築作業の効率化も期待できるでしょう。
(画像はPixabayより)