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建築業界のAR活用事例5選!検査・点検業務の効率化や景観シミュレーションも

2020.09.28

建築業界におけるAR技術

ARはAugmented Realityの略で拡張現実と訳されています。AR活用事例としてもっともよく知られているのは、任天堂のゲーム「Pokemon Go」でしょう。スマートフォンのカメラを周囲に向けると、周囲の風景のなかにモンスターが表示されます。

建築業界でもさまざまな工程で実用に供されています。建築では設計から施工、検査や保守まで数多くの工程があり、その多くが建築現場での作業になります。

建設作業には複数の企業、多くの作業者が携わるので、企業間、作業者間の連携を維持することがキーとなります。作業をすすめる上での共通の情報は図面や工程表などであり、作業を図面どおりにおこなうことが求められます。

AR技術を活用することによって、作業者が常に図面や作業指示を確認することが可能になります。あるいは完成モデルを現場の風景に重ねることによって、直感的な完成イメージを目の前において作業できる環境を実現します。

VRとは違うARの特徴

ARは同じようにゴーグルなどを使用するVR(仮想現実)と、比較あるいは混同されます。VRではゴーグルなどで見る映像は全てコンピュータで作成された映像ですが、ARでは実際のその場の映像にコンピュータで作成された映像を重ねあわせて見ます。

VRでは現実とは異なる景観を見ることができるため、遠隔地の景観や現在は存在しない景観を視聴する用途に利用されます。これに対してARはその場の景観に重ねてコンピュータ映像を合成することから、その場所において必要な情報を提供するという用途に利用されます。

 

建築業界でのAR活用メリット

建築業では計画から建築施工、検査までの工程のなかでは建設現場での作業工程が圧倒的に多く、ビルやマンションなど規模の大きい建築作業では数多くの人が携わります。

建築現場では多くの場合工程によって異なる企業が作業を請負い、管理者は図面や工程をにらみながら現場での調整作業をおこないます。ときには現場作業で問題が発生する場合もあり、そのようなときには管理者は設計者や作業者と相談しながら解決します。

全ての作業者への指示徹底や監督は、規模が大きくなればなるほど困難をともないます。このような建築作業においてはARを活用することによって大きなメリットを享受することが可能です。

 

作業効率の向上

AR技術を活用することによって、作業対象の映像にそのときに必要な情報や図形などを適宜表示することが可能になります。各作業者は作業の進行に合わせてその作業対象の図面あるいは作業指示を、作業対象とともに見ながら作業できるので作業効率が向上します。

作業者の疑問点や問題点についても管理者や作業リーダーと画面を通して共有することで、管理者やリーダーが作業場所に出向く必要がなくなります。

 

作業者間や担当部門間での情報共有

建築作業では規模が大きくなると、数多くの人や企業が関わります。建築作業をすすめていくなかでは携わる全ての人が、設計図面や工程表など同じ情報を共有しながら実施していく必要があります。

作業の進行状況によっては、工程に変更が生じたり設計変更が生じたりする場合もあります。設計変更や工程変更は図面や指示書、工程表に反映していきますが、情報共有が足りずに工程に無駄が出ることもあります。

このような建築作業にARを活用することで、携わる全ての企業、作業者間で同じ情報に基づいて作業をおこなうことが容易になります。作業に問題が発生した場合にも、問題の状況を関連する全ての企業、作業者で同じ画面を共有することで、問題解決に要する時間も短縮できます。

 

安全管理の徹底

ARを活用すると、建築現場の映像に図形などを重ねて表示できます。建設途上の建築現場は安全設備などは不十分なので、注意が必要な部分が数多くあります。

現場を映像で確認したときに注意すべきポイントが現場映像に重畳して表示されることで、作業者に注意喚起することが可能になります。現場の映像に重ねて完成図形を表示することで、事前に作業手順の確認をおこなうことができ、作業の安全性が高まります。

 

建築業界でのAR活用事例

建築作業のさまざまな工程において、ARの活用がすすめられています。建築事業者の知見と要求に基づいてソフトウェア開発企業や端末開発企業が連携して、専用の端末やソフトウェアの開発がおこなわれています。

 

ARで検査・点検業務を楽にするアプリケーション

建設業界に向けて各種の問題解決に向けたソリューションを提案するエムソフトでは、建築物の検査・点検業務を支援するアプリケーション「Pinspect」を開発し、提供しています。

検査・点検の対象箇所をデジタル付箋(ピン)として空間上に表示します。現場の写真やメモをこの座標と紐付けして記録し、レポートや図面として出力することができます。

さらにこの情報をクラウド経由でBIM、CIMデータに、反映することもできます。このソフトウェアによって点検箇所を明確化するとともに、点検漏れを防止することが可能となります。

 

簡単かつ短時間に測量ができるARアプリケーション

「スマホdeサーベイ」は、大林組とエムソフトが共同開発したスマートフォン用測量アプリケーションです。

OSに標準搭載されているAR機能を使っていて、スマートフォンに対象物を認識させて自動で測量をおこない、土量を算出します。従来手作業でおこなっていた作業の自動化が可能になり、大幅な効率向上を実現しました。

 

AR技術による景観シミュレーション

東京農業大学では世田谷キャンパスの再整備にあたって、新研究棟の3D CGモデルスマートフォンの写真にAR技術によって合成して景観の変化をシミュレーションしました。

新研究棟のモデルは外観の異なる5種類を作成して、それぞれについて景観に与える影響や圧迫感などをシミュレーションしました。この研究結果は「拡張現実(AR)技術による景観シミュレーション」という論文として発表されました。

 

ARでマンションの外壁検査

マンションの定期的なメンテナンスでは全面打診調査が義務づけられていて、通常は2名1組で実施しています。全国的にマンションストックは拡大を続けていて、マンションメンテナンスの省力化は喫緊の課題です。

「AR匠RESIDENCE」では、作業者が装着したヘッドマウントディスプレイによって建物に平面図を重畳表示して検査ポジションを指示し、検査結果の記録もおこないます。

これによって打診検査は1名でおこなうことが可能となり、従来後から手作業でおこなっていた報告書も自動作成されます。長谷工コーポレーションとアウトソーシングテクノロジーの共同開発による成果です。

 

ARによる建設工事支援

建設機械大手のコマツがICT油圧ショベル「PC200i-11」に搭載している、ARを活用した新しいサービスが「Kom Eye AR」。コマツとカヤックが共同開発して、2018年8月にリリースしました。

建設機械のステレオカメラで撮影した映像と設計3DモデルデータをAR合成して、運転席内のタブレットにリアルタイムで表示します。オペレータは作業が設計どおりにすすんでいるかどうかを、常に確認しながら作業をすすめることができます。

さらにヘッドアップディスプレイには建機の位置や状況が図面上で表示されます。通信機能もそなえていて、常に最新の図面やモデルのデータをダウンロードして表示します。

 

まとめ

建築事業では1つの建築プロジェクトに多くの企業と人員が携わり、作業工程の多くが建設現場で実施されます。また建築物は定期的な保守作業が必要であり、長期間にわたって点検や補修作業が必要です。 これら多岐にわたる作業を現場で適切に実施できるように、さまざまな工程でAR技術の活用がすすんでいます。ARの応用はスマートフォンやタブレットを用いたものが多く開発されていますが、一部にはヘッドマウントディスプレイを使うアプリケーションも実用化されています。

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