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建築業界のVR活用事例6選!

2020.07.31

VR技術の概要と建築

VR(仮想現実)はVRゴーグルを装着することで、立体空間のなかに身を置いているかのような映像体験を提供する技術です。センサによってゴーグルの位置や方向、角度を検出することで、装着者が見ている視点での映像をリアルタイムに表示します。

装着するゴーグルは高精細な専用のものから、スマートフォンを装着して使用する簡易的なものまで各種あります。一方でVR映像を長時間視聴すると「VR酔い」などと呼ばれる身体的な悪影響も報告されていて、解決すべき課題もあります。

またVRに近い技術としてAR(拡張現実)があります。こちらは実際の映像にコンピュータ映像を重ねあわせて表示する技術で、ゲームの世界では世界的にヒットしたPokemon Goがよく知られています。

これらVRやARはゴーグルの低価格化とともに、ゲームやビジネスへの活用が拡がっています。VRの立体映像作成に実際の建築データを使うことで仮想空間にその建築物を作成できます。これを利用すると実際の建築物を仮想的に体験することが可能となり、VRは建築との親和性が高い技術であるといえます。

建築業界におけるVR活用のメリット

建築物は一般的な工業製品に比べると大型であり、簡単に全体を見わたすことができません。建築工事では一般の住宅であっても危険を伴う高所作業があり、安全な作業のためには一定の訓練が必要です。

こういった場面でVR技術やAR技術を活用することによって大幅なコスト削減や効率化が可能になると予想され、応用範囲が拡大することが期待されています。

 

効率的なコミュニケーション

建築は多くの専門職が携わってはじめて完成する仕事です。建築を構想通りにすすめるためには、それぞれの専門職との緊密なコミュニケーションが欠かせません。建築は関わる全ての人の間で情報が共有され、常に共通の理解のもとで議論や検討をすすめることが大切です。

建築のもとになるのは設計図面ですが、たとえ専門家どうしであっても平面的な図面だけでは誤解が生じることがあります。このときVR映像を使うと遠隔地にいる人との間でも、実際の建築物を目の前にしておこなうのと同様に議論や検討をすすめることが可能になります。

 

体験によるイメージ共有

建築業界では関係者間の打ち合わせや検討あるいはエンドクライアントへのプレゼンをおこなう場面で、設計図面や建築パースを活用します。

建築パースは建築物内外の様子を立体的に表現していて、ある程度イメージの共有には役立ちます。それでもサイズ感や距離感など、細部では誤解を生じることがあります。

設計データをもとにしたVR映像を活用すると、関係者全員が実際のサイズや距離を明確に共有することが可能で、細部の構造まで立体イメージを共有することが可能となります。

 

建築作業の効率化と安全管理

建築作業では一部のパーツは工場などで制作することができますが、重要な作業は全て建築現場でおこないます。現場での作業で細部の指示が必要なときは監督者あるいは設計者が現場で指示しますが、指示者が遠隔地にいて図面をもとに指示をおこなう場合もあります。

このときVRを活用することによって、作業をより効率的におこなうことが可能となります。現場作業者が事前にVRによって作業を立体映像で学習することで、明確に作業手順を理解することが可能になります。

あるいは遠隔地からの作業指示をVRでおこなうことによって、現場の状況に即した的確な指示をおこなうことが可能となります。

また建築現場で最も重要な安全管理においては作業者に対する安全教育が非常に重要であり、なかでも事故体験は大切な項目です。安全教育のために専用の施設を設置する事業者もありますが、VRを活用することで場所を選ばず安価な安全教育が可能になります。

実際の現場と同様な場面をVRで再現することで、安全教育とともに安全管理上の問題点を事前に見つけるなどの活用も期待できます。

 

建築業界でのVR活用事例

建築に関わるさまざまな場面でVR技術への期待度は非常に高く、建築事業者そしてシステムやコンテンツを提供するIT業界でもさまざまなアプローチをおこなっています。

実用化にあたってはVR技術だけでなくAR技術もあわせて活用することによって、より効率的でより安全な作業環境を実現しようとしています。

 

建築設計の事前検討

建築設計にVRを活用することで設計を担当する建築士とエンドクライアントあるいは不動産事業者との間でイメージを共有して、設計を効率的にすすめることができます。

例えば室内空間をVRで再現して、家具を設置したイメージや使い勝手などの事前体験を提供し、そのフィードバックを設計に活かします。ラストマイルワークス株式会社が提供しているソーシャルVRサービス「comony homes」がこれに相当します。

また東京農業大学では世田谷キャンパスの新研究棟建設にあたってAR技術を使って景観シミュレーションをおこない、眺望や圧迫感を確認して研究棟の外観設計に活かしました。

 

建築作業の事前検討

建築物を建設する前にVRによってイメージを共有することによって建築作業を事前に検討し、足場の設定や作業実施の際の問題点を事前に洗い出すことが可能になります。

札幌の一二三北路株式会社は2015年に施工した水管橋新設工事においてVRを活用しました。足場を組んだ現場を3Dモデルで忠実に再現して現場作業を事前に確認して、問題の確認や安全管理に活用しました。

 

建築作業の遠隔指示

建築現場ではそれぞれの作業員への指示はチームリーダーがおこないますが、規模の大きい建築工事では作業指示の不徹底や臨機対応の遅れなどの問題が発生します。

NECソリューションズや三谷産業などはARを活用したコミュニケーションツールを提供していて、遠隔地や現場でも離れた位置から現場の映像を確認しながら作業員にポインタや映像で指示を与えることができます。これによってリーダーがその場所に行くことなく、的確な指示を与えることを可能にします。

 

建築作業研修

建築現場では高所作業や狭い空間での作業が多く、数多くの資材が運搬されるので、さまざまな安全リスクが潜んでいます。こういったリスクを知り危険を回避するためには、作業員のトレーニングが必要不可欠です。

一部の建築事業者では危険リスクを体験できる研修センターを保有していますが、多くの事業者では座学やビデオ視聴による研修が主体です。VRを活用して実際の現場を仮想空間に再現して、さまざまな事故や危険を仮想体験する研修システムが開発されています。

明電舎では墜落災害、転落災害、火傷災害などを仮想空間で体験できるVRコンテンツを開発し、社内研修に活用しています。 大林組のVRiel(ヴリエル)はBIMデータとVRを使い、実際の建築のモックアップを再現して鉄筋配置の不具合を探す体験研修システムです。実際のモックアップを使うことなく場所を選ばず効果的な研修を可能としています。

 

遠隔地からの建築作業

建築作業では特殊な重機による作業が必要な場面が数多くあります。重機とともに重機のオペレータは、作業現場をいくつも掛け持ちして飛び歩いています。重機のオペレータは専門の免許が必要であり、熟練のオペレータは多くの現場で取り合いになります。

大成建設では遠隔地にいながら実際に搭乗しているように重機を操作できる、臨場型映像システム「T-iROBO Remote Viewer」を開発しました。

オペレータはHMDを装着して、重機のカメラから取得したあらゆる方向の映像を確認しながら作業をおこなうことができます。これによって重機さえ設置すれば、複数の建築現場での作業をオペレータの移動時間なく実施することが可能となります。

 

VRによる建築コンテスト

VR技術を建築のなかで活かしていく活動の一環として、建築とXRのコミュニティ団体「xRArchi」は2018年に第0回VR建築コンテストを開催しました。

さらに2019年にはこのVR建築コンテストから進化した、VR Architecture Award(VRAA)が開催されました。VRAAでは狭い意味での建築という考えから、空間の構造といったさらに広い定義でのコンテストになっています。

 

まとめ

建築は精密な設計図面がありながら、関係者や一般の人には全体像を把握することが困難です。建築作業は多くの人や重機が関わり連携が重要であり、一方で多くの危険やリスクが潜んでいます。

そこでVRやARを活用することによって誰もが建築の全体像を直感的に把握することが可能になります。建築業界はVR技術を活用することが効果的な業界でもあります。VRの活用は体験研修を中心に徐々に拡大していて、遠隔作業もすでに実用化が視野に入っています。

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