【2026年版】建築パースという仕事 - 種類・費用相場・AI活用まで実務家が解説

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AIでパース制作の仕事はなくなるのか?

2026.10.21

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——パース業界を牽引してきたスペースラボ代表・柴原誉幸が語る

パース制作を事業としてきた私が言うと、波紋を呼ぶかもしれません。
それでも、経営者として、今感じていることを書いておこうと思います。

私は、これから1〜2年で、「パースを制作できること」だけを強みにしている事業者の多くが、厳しい状況に置かれると考えています。
そして、パース制作の外注市場そのものも、金額ベースで縮小していくと見ています。
パースそのものが不要になるからではありません。

パースが必要なことと、その制作を外部のプロに依頼する必要があることは、別だからです。

この違いが、これからの市場を大きく変えると思っています。


著者プロフィール

柴原 誉幸|スペースラボ株式会社 代表取締役/iceberg theory holdings株式会社 代表取締役

大学の建設学科在学中にCGと出会う。展示会デザインや映像制作の経験を経て、ニューヨークで店舗設計、日本でインテリアデザイン・建築設計に従事。2009年にスペースラボ株式会社を設立。

同社は建築ビジュアライゼーションを中心に、累計20万点以上の制作、累計3,000社との取引実績を持つ。建築CGパースに加え、BIM支援、VR・メタバース、3Dスキャンによる現地調査支援、画像生成AIの導入支援などを展開している。

株式会社Too主催「design surf seminar 2024」では、デザイナーを支える事業展開と、建築・デジタル技術の可能性について講演。「建築ビジュアライゼーションMeetUp 第8弾」では、建築業界における画像生成AIの可能性をテーマに登壇。自社の画像生成AIセミナーでも講師を務め、実務での活用方法を発信している。

設計実務とデジタル制作の両方の経験を生かし、設計者と建築業界の課題解決に取り組む。

プロフィール・登壇実績

公式プロフィール・代表メッセージ|スペースラボ

講演レポート「デザイナーの未来を支える:メタバースから現実世界まで」|株式会社Too

登壇情報「建築業界における画像生成AIの可能性」|株式会社Too

画像生成AIセミナーの開催実績・講師紹介|スペースラボ


目次

  1. AIは、私の予想よりも早く「誰でも使えるもの」になっている
  2. 「AIでパースは描けるのか?」への答え
  3. 市場を変えるのは、AIの100点より「顧客にとっての80点」
  4. パース制作の外注市場は、縮小すると考えている
  5. AIでもつくれる時代に、わざわざあなたに頼む理由はあるか
  6. これは、パース業界だけの話ではない
  7. スペースラボは、設計者と建築業界を支える会社でありたい

AIは、私の予想よりも早く「誰でも使えるもの」になっている

正直に言うと、AIの進化は、私が想像していた以上に速いです。

特に予想を超えているのは、専門知識がなくても活用しやすくなっていることです。

少し前まで、画像生成AIを使うには「どういうプロンプトを書くか」が大きなテーマでした。しかし、私自身の使い方でも、細かな指示の書き方を考えるより、画像を見せて、意図を伝え、対話しながら調整する場面が増えています。

「プロンプトって、何でしたっけ?」と言いたくなるほど、使い方が変わってきました。

操作の難しさが下がれば、使える人は増えます。

これは、制作会社の作業が速くなるという話にとどまりません。これまで制作会社に依頼していた人が、自分たちで必要なものをつくれるようになる、という話です。


「AIでパースは描けるのか?」への答え

よく聞かれますが、私の答えは「半分は、すでに描ける。もう半分は、まだ難しい」です。

空間の雰囲気を伝える。デザインの方向性を比較する。提案の初期段階でイメージを共有する。

こうした用途では、AIが有力な選択肢になると感じています。

一方で、図面との整合を保ち、指定した形状や素材を再現し、修正を重ねても他の部分を崩さず、最終的な成果物として納める。ここには、まだ人の判断や技術が必要です。

さらに私は、モデリングや、制作アプリ内で品質を上げるための設定についても、AIが実務を担う範囲は広がっていくと見ています。

ただし、技術的にできることと、時間や費用に見合うことは同じではありません。

AIだけで最後まで仕上げようとして試行を重ねるより、途中からプロが手を加えたほうが、速く、確実で、安くなる場面は残るでしょう。

ここでいう「80点」「100点」は、厳密な品質評価ではありません。用途に対して、どこまで完成度を求めるかという意味です。

AIに80点まで任せ、残りの20点をプロが仕上げる。この分担が合理的な仕事もあるはずです。

しかし、そこで安心してはいけないと思っています。


市場を変えるのは、AIの100点より「顧客にとっての80点」

私は、ここが最も重要だと思っています。

AIが100点のパースをつくれる日を待たなくても、80点で十分という顧客の外注需要は減っていきます。

これまでは、簡単なイメージ確認に使いたい場合でも、社内で制作できなければ、外部に依頼する必要がありました。

「ここまでの仕上がりは必要ないけれど、パースが必要だから制作費を払う」

そうした依頼もあったはずです。

その顧客が、自分たちで目的を満たす画像をつくれるようになったらどうなるでしょうか。

プロがつくる100点の価値を理解していても、追加の費用を払う必要はない、と判断することは十分に考えられます。

顧客が求めているのは、常に最高品質のパースではありません。次の判断に進めること、提案が伝わること、関係者と合意できることです。

その目的を満たせれば、制作方法は変わります。

プロにしかつくれない20点が残っていても、顧客がその20点を必要としていなければ、依頼にはつながらない。

これが、私が危機感を持っている理由です。

では、こうした変化の影響を受ける依頼は、どれくらいあるのか。

私は、従来のパース外注需要のうち、7〜8割が、内製化・単価低下・発注内容の変化にさらされる可能性もあると見ています。

これは統計に基づく数字ではありません。制作現場とAI活用を通じた、私自身の危機感を表す予測です。市場の7〜8割がそのまま消滅する、という意味でもありません。

それでも、経営判断としては、このくらい大きな変化を想定しておく必要があると考えています。


パース制作の外注市場は、縮小すると考えている

私の見立てでは、AIの普及によって、パース制作の外注市場は、金額ベースで縮小します。

パースを使う場面や、つくられる画像の数は、むしろ増えるかもしれません。しかし、それが制作会社の売上増加につながるとは限りません。

これまで外注していた顧客が、自分たちでつくれるようになる。外注する場合も、AIによる効率化によって、従来より低い価格が求められるようになる。

外注する件数が減り、1件あたりの制作単価も下がる。この二つが同時に進むと考えています。

もちろん、高い品質や専門的な対応が必要な仕事は残るでしょう。AIによって新しく生まれる仕事もあるはずです。

それでも私は、それらが従来のパース制作市場の縮小を埋め合わせるほどになるとは見ていません。

「プロにしかできない仕事が残ること」と、「今の数の制作会社や制作者を支えられる市場が残ること」は、別の話です。

そのため、制作を効率化するだけでは十分ではありません。自社のコストを下げられても、価格競争が進み、売上や利益を維持できるとは限らないからです。

人件費の差を強みにした海外制作であっても、この変化から逃れるのは難しくなるでしょう。

私は、パース制作の外注市場が縮小することを前提に、会社の次の役割を考える必要があると思っています。

もちろん、スペースラボも例外ではありません。


AIでもつくれる時代に、わざわざあなたに頼む理由はあるか

これから問われるのは、この一点だと思っています。

「AIでも制作できるようになった世の中で、わざわざあなたにお願いする理由はありますか?」

その理由は、必ずしも画の美しさだけではありません。

設計意図を理解してくれる。曖昧な依頼を整理してくれる。修正の影響に気づいてくれる。急ぎの場面で確実に対応してくれる。提案そのものを前に進めてくれる。

制作会社が継続して選ばれている背景には、本人たちが言語化していない価値もあると思います。

画の品質だけを見れば、もっと上手な会社がある。それでも依頼が続くのは、顧客にとって、ほかにも頼む理由があるからでしょう。

大切なのは、その理由を見つけ、磨き、顧客に伝えることです。

品質、対応、専門性、提案力。そのどこに、自社に依頼する明確な理由があるのか。

市場が縮小するなかでは、「制作できます」だけで選ばれ続けることは、ますます難しくなります。


これは、パース業界だけの話ではない

私は、この変化はパース業界だけで起こるものではないと思っています。

デザイン、映像、文章、プログラミング。デジタルの技術を使って対価を得ている人は、誰もが同じ問いに向き合うことになると考えています。

「これまで自分に依頼されていた作業を、顧客自身がAIでできるようになったとき、それでも自分に依頼する理由は何か?」

影響の速さや大きさは、仕事によって異なるでしょう。しかし、専門的な操作ができること自体の価値が下がっていくという変化は、広く起こると見ています。

だからこそ、これからはプロとしての技術が、本当の意味で問われると思っています。

顧客が何を実現したいのかを理解する。その目的に必要な品質を見極める。AIの出力にある問題を発見する。そして、必要なところを確実に仕上げ、成果物に責任を持つ。

そこまでできて、初めて「プロに頼んでよかった」になるのだと思います。

残りの20点も、単なる見栄えの差とは限りません。

図面との不整合、指定と異なる形状、伝わらない設計意図。見た目が整っていても、仕事の目的を果たせていないことがあります。それを見抜き、直せることには価値があります。

80点で十分な仕事もあれば、残りの20点が成否を分ける仕事もある。その違いを判断し、必要な品質を実現できることも、プロの技術です。

ただし、その技術を持っているだけで、仕事が続くわけでもありません。

プロの技術が、顧客にとって必要な成果につながっているか。その価値に対して、お金を払ってでも頼みたいと思われるか。

AIが身近になるほど、私たちの専門性と、その専門性が生む価値は、これまで以上にはっきりと問われるようになると思っています。


スペースラボは、設計者と建築業界を支える会社でありたい

私は、今回のAIの台頭を前向きに受け止めています。

危機感はあります。同時に、顧客のために解決できることが増えるという期待もあります。

私自身、スペースラボの役割を「パース制作」に限定していません。

私たちは、設計者を支え、建築業界の仕事を前に進める会社でありたいと思っています。

創業時には、そのための手段としてパースへの需要が高かった。だから、パース制作の技術と体制を磨いてきました。

しかし、顧客を支える方法は、パースだけではありません。

現地の状況を正確に把握する。図面のない空間を記録する。関係者が同じ情報を見ながら判断できるようにする。設計や提案に必要な情報を整える。

建築の現場には、まだデジタルで改善できる仕事がたくさんあります。

私たちが取り組んでいる3Dスキャンによる現地調査支援「現チョク」も、その一つです。設計や施工の前段階にある、現場の情報を集め、共有する負担を減らすことを目指しています。

私たちが培ってきた、建築の実務とデジタル制作の両方への理解は、こうした課題の解決に生かせると考えています。

AIによって、以前は開発費や制作費が高く、実現しにくかった解決策にも手が届くようになる。その可能性に、私はわくわくしています。

パース制作の効率を上げることにも取り組みます。そのうえで、顧客が抱えている、さらに手前や先の困り事を解決していきたい。

私たちが守りたいのは、パースをつくる作業ではなく、設計者と建築業界の役に立つという役割です。

AIによって手段が変わるなら、私たちも変わる。

それが、スペースラボのこれからの方針です。

※本文中の将来予測や市場への見解は、執筆時点における著者個人の考えです。


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